債権者に対し利息制限法で規定されている利息の上限を越えているにもかかわらず、債務者が納得して返済しているのであれば違法ではない、というのが「みなし弁済」です。
本来利息の金利を超えた契約は無効なのですが、貸金融業者の多くは、このみなし弁済を利用して利息制限法を超えている部分の支払いも有効な利息であると主張することも少なくありません。
みなし弁済が適用されるためには、下記の5つの条件すべてを満たしていることを証明しなければなりません。
- 貸金業者として登録を受けていること。
- 契約の時、貸金業規制法17条の要件を満たす契約書を業者が債務者へ交付していること。
- 弁済の時、貸金業規制法18条の要件を満たす受取証書を業者が債務者へ交付していること。
- 債務者が、約定金利による利息を「認識して」自ら支払ったこと。
- 債権者が、約定金利による利息を「任意」で支払ったこと。
消費者金融、サラ金、クレジットカード会社、ヤミ金など多くの貸金業者は、上記の要件全てを満たしていることはほぼないといっても過言ではありません。
この「みなし弁済」と密接なかかわりがあるのが「グレーゾーン金利」です。
グレーゾーン金利とは?
「グレーゾーン金利」とは、2010年に貸金業法が改正されるまで存在していた、利息制限法と出資法それぞれの上限の間の金利を指します。
出資法の上限金利は、29.2%(年率)で、利息制限法の上限金利15~20%。
この二つの法律「利息制限法」と「出資法」は、いずれも貸金業者に対して金利の上限を定めている法律ですが、本来ならば貸金業者は、利息制限法に則って金利を設定しなければならないのにも関わらず、顧客に対して15~20%を超え29.2%を超えなければ”有効”という抜け道がありました。
本来払うべき金利より9.2%~14.2%という高い金利で貸し付ける業者も多発しました。
出資法を都合よく利用した通常より高い金利で貸し付けを行っていたことから、白と黒の間、グレーな金利であると言われていました。
グレーゾーン金利によるみなし弁済への影響
出資法の上限金利を超える貸付は罰則規定がありました。しかし、利息制限法の上限金利を超えての貸付については罰則規定がなく、グレーゾーン金利での貸付が長い間黙認されていました。
みなし弁済は、貸金業者が利息制限法で定められた上限金利を超える利息で契約することは禁止していましたが、一定の条件を満たすことで、その金利制限法の上限金利を超えても有効とみなす制度のため、その性質上、高金利での貸し付けを認める規定ともいえるでしょう。
結果的に、グレーゾーン金利の存在で、多重債務者を急激に増加させてしまう大きな要因となりました。
そのため、2006年に最高裁でみなし弁済を認めないという判決が下されたことをきっかけに、政府は貸金業者に関連する法整備を進めようと重い腰を上げ、貸金業法の改正へと繋がったのです。
みなし弁済規定の廃止
グレーゾーン金利が黙認されてきたことにより、多重債務に陥る人が増え社会問題化となりました。
みなし弁済規定は、2010年の貸金業法改正で廃止され、現在では、利息制限法の上限金利を超える貸付はできません。また上限金利も見直され引き下げられ、グレーゾーン金利も廃止されました。
さらに貸金業法では、利息制限法の上限金利を超える利息を取った業者に対して、行政処分の対象になるという規定が、新たに追加となり、グレーだった金利にも一縷の光が射しこみました。
しかしながら、闇金業者が消えてなくなったわけではありません。
融資を受けたくても審査が通らない人を巧みに誘引し、「ブラックOK」、「多重OK」などの甘い言葉を掲げ、グレーゾーン金利を超えた金額で貸し付けをしている闇金業者が未だにいます。
ずるがしこい闇金業者の中には、表向き数%の金利をうたっていても、手数料といった別の名目で法外な金利を取るケースも報告されています。
電話やwebなどを通してお金を貸す違法なヤミ金業者も存在しますが、闇金業者からはけして借りてはいけません。